このページはPR・広告を含みます

AITXが警備業界の人材を起用、販売網拡大で問われる現場力

AITXが警備業界の人材を起用、販売網拡大で問われる現場力を表すイメージ画像

ニュースの概要

AI警備・業務支援ソリューションを手がける米AITXは、子会社のRobotic Assistance Devices(RAD)が、警備業界で経験を積んだTom Reilly氏を起用したと発表した。Reilly氏は、機器を取り付ける施工業者(インテグレーター)や販売代理店を通じた新しい販売網の設計と実行を担う。自社の営業だけでは届かない顧客層に、既存の警備会社や設備会社の信用力を借りて製品を届ける狙いがある。技術そのものよりも、売り方と売る人の顔ぶれを変える一手であり、AI警備ロボット市場が実験の段階から本格的な商売の段階へ移りつつあることを示す動きだと言える。

引用元: AITX傘下RAD、警備ソリューションの販売・代理店戦略を強化(Yahoo Finance / Newsfile Corp.)

分析・見解

技術より先に販路が勝敗を分ける段階に入った

AI警備の分野では、ここ数年でカメラの精度も自律走行の性能も大きく上がった。駐車場や倉庫を夜通し巡回するロボット、映像から不審な動きを拾う解析ソフトは、もう珍しいものではない。

ところが、性能が上がっても売れ行きが自動的に伸びるわけではない。警備の発注者は、新しい機械そのものより「事故が起きたとき誰が責任を持つのか」を気にする。メーカーが直接売り込むより、長年の取引がある地元の警備会社や設備会社が薦めるほうが、契約は圧倒的に進みやすい。今回の人事は、この現実を正面から受け止めたものと読める。

警備出身者を置く意味は、現場の言葉で話せること

警備業界は、契約の更新、巡回報告書、有人警備との料金比較といった独特の慣習で動いている。技術者の言葉で「検知率が高い」と説明しても、警備会社の営業担当は響かない。「夜間巡回の人件費を何割減らせるか」「誤報が出たら誰が駆けつけるか」と聞かれるからである。

業界出身の責任者は、この翻訳役を果たせる。さらに、代理店候補の顔ぶれと力関係を知っているため、どの会社を最初に口説くべきかを見誤りにくい。新興メーカーが最も欠きがちなのは、この人脈と信用である。

代理店経由の販売が抱える二つの弱点

ただし、代理店モデルは良いことばかりではない。第一に、顧客との距離が遠くなる。現場で何が不満なのかがメーカーに届きにくくなり、改良の速度が落ちる。第二に、代理店が自社の既存サービスを守ろうとして、ロボットの提案に消極的になる恐れがある。人が巡回する契約を抱える警備会社にとって、ロボットは自社の売上を食う存在にもなり得るからだ。

似た例は、太陽光パネルや業務用ソフトの世界にもある。直販から代理店網へ切り替えた企業は、販売台数が増える一方で、品質のばらつきと値引き競争に悩まされた。AITXも、台数を追うか、品質を守るかの選択を迫られるだろう。

日本の警備市場から見た今後の見通し

日本でも、警備員の高齢化と採用難は深刻で、夜間の巡回や受付を機械で補う動きが広がっている。ただし日本では、機械警備と人の駆けつけを一体で契約する習慣が強く、ロボットだけを単独で売る形は定着しにくい。

そのため、海外のメーカーが日本に進出するなら、現地の警備会社と組んで「ロボット込みの警備サービス」として提供するのが現実的だろう。今回のAITXの動きは、その手順を米国で先に試す例として参考になる。

ビジネスへの影響

導入を検討する企業が販売元に確認すべき三つの点

ロボット警備の導入を考える企業は、機械の性能表だけで判断しないほうがよい。確認すべきは、故障時に何時間以内に誰が来るのか、誤報が続いたときの責任の分け方、契約を打ち切るときの機器の扱いである。代理店経由の製品では、この窓口がメーカーなのか代理店なのかが曖昧になりやすい。契約書の段階で、保守の責任者を一社に絞らせることが大切だ。

警備会社にとっては脅威であり商機でもある

既存の警備会社は、ロボットを敵として見るか、新しい商品として扱うかで将来が分かれる。人手不足で夜間の巡回要員を確保できない現場は、すでに多い。その穴をロボットで埋め、人は異常時の対応と顧客対応に集中させれば、一人あたりの受け持ち範囲は広がる。

代理店になることは、単なる仲介料の獲得ではなく、自社の契約先を他社に奪われないための防御にもなる。まずは小さな現場一か所で試し、費用対効果と誤報の頻度を数字で確かめてから、拡大を判断するのが堅実である。

投資家や提携先が見るべき数字

新しい販売網の成果は、発表文の言葉ではなく数字に表れる。代理店の契約数、そのうち実際に出荷につながった割合、定期課金の継続率を四半期ごとに追うとよい。契約数だけが増えて出荷が伸びない状態は、看板だけの代理店が増えているサインである。

関連記事

ブログ一覧へ戻る